みなさん、こんばんは。去る2024年6月5日、Praying Mantisのフェアウェルライブを観に、渋谷Club Quattroへ行って参りました。「泣きました」くらいクソつまんねえことしか言えないと思っていたので、ブログなど書く予定はまったくなかったのですが、やはりバンドの50年の歴史のうち、30年くらいはお世話になったひとりとして、伝説的フィナーレに黙っていられず、日記程度は書き留めておきたいという考えに至りました。ティノ&クリス、本当に長い間、ありがとうございました。まだ辞めちゃうというのが信じられないのですが、トロイ兄弟はまさに私の青春です。
※BURRN!誌にインタビューが掲載されていたことを先ほど知りました。購入しておりませんので、無知ゆえに至らぬ記述がございましたらご容赦ください。
- 30年前よりも若々しく、瑞々しい生命力を感じさせるパフォーマンス!本当にPraying Mantisは一線を退くのでしょうか?
- オジサンたち、泣きながら大合唱!叙情と郷愁の嵐は不意打ちの3曲目 A Cry For The New Worldから始まった!
- クリス、泣きながらLovers To The Graveを絶唱!……というか、泣き過ぎだって。涙の連鎖が場内で起こり、もらい泣きするオジサンが続出……
- こんなに素晴らしいアルバムを続けて2枚作ったのに、何故、さよならを言う?マンティスの曲作りのポテンシャルはいま再び盛り返してきているのに…
- イントロだけで勝負を決めた伝説の「Letting Go」!もし「A Cry For The New Worldからの曲を多めにしろ」というアドバイスをしたのであれば、さすがは伊藤政則御大、今回のライブの勘所をわかっている!
- 「Flirting With Suicide」のちょっとコミカルな掛け合いから、究極の予定調和!そして、ダブルアンコールではまさかのカバー曲でフィニッシュ!
- ティノ&クリスはLOVEBITESという日本のバンドまで連れてきてくれたロックの案内人なのであります。そういう意味でも深く感謝申し上げます!
- 追記
30年前よりも若々しく、瑞々しい生命力を感じさせるパフォーマンス!本当にPraying Mantisは一線を退くのでしょうか?
それで、マンティスは本当に引退するんですかね?これを書いている今、ライブが終わってから1日経っているのですが、この点が未だに疑問なのであります。私はLive At Last(NWOBHM10周年記念公演)の時は浪人生活を送っておりまして、深いお付き合いはそれからもう少し経ってになります。大阪のモーダホールという場所で初めて観たこともありまして、未だ当時の記憶が鮮明なのですが、明らかに今回のほうが若々しかったですし、衰えどころか、抜群の安定感に加え、瑞々しい生命力を感じたくらいです。海外の方がYouTubeにアップしていたライブをいくつか鑑賞して「お互い年を取ったなあ」なんて思ったこともあったので、心配していたのですが、それこそ、まったく余計なお世話ということでしょう。
それにしても、この日は気合からして違ったように思います。最後だからあり得ないほどのアドレナリンが出たというのもあるのでしょうが、あの場にいた多くの人は「なんで?」と口を揃えると思います。正直、署名運動をすることで、予定を変更してもらえるなら…なんて考えてしまいますが、やっぱりビジネス的にも肉体的にも、もう海外ツアーはつらいのかなあ。はるかに若いこの私が深刻な腰痛と肩こりに加え、持病を複数抱えていますので、兄貴たちの幕を引くという決断にとやかく言うことはできません。
オジサンたち、泣きながら大合唱!叙情と郷愁の嵐は不意打ちの3曲目 A Cry For The New Worldから始まった!
さて、会場を訪れたみなさんは、どの時代に、どのアルバムを最も熱心に聴いていたのでしょうか。私は1988年あたりはかなり背伸びをして、伊藤政則さんのラジオを聴いていたので「Time Tells No Lies」はもちろん、その前後に制作されたシングルや「Time Slipping Away」の未完成バージョンのライブなども、西新宿のイケナイモノを売っている店で買いました。ちなみに、ロドニー・マシューズがジャケットを手掛けたオレンジ色の復活作「Predetor In Disguise」はバンド史上最低の駄作だと思っており、逆に「俳優になる」宣言で有名なコリン・ピールが歌った涙目ジャケットがダサい「A Cry For The New World」はヘヴィメタル/ハードロックのアルバムの中でもベスト10に入るほど好きな作品です。
こういう趣味をしていますので「Praying Mantisの『Praying Mantis』というオープニングはよいな」などと余裕をぶっこいて観ていましたら、3曲目に不意打ちで飛び出した「A Cry For The New World」では、激しい動悸に襲われ、気付いたら眼からドバドバ涙が流れていました。泣く時の感情の昂り方といいますか、胸の鼓動というのは、いくつか種類があると思うのですが、この場合「亡くなった祖母が私に宛てて書いた手紙が出てきた」時のような感覚に近かったように思います。まさしく反則と偶然の合わせ技ですね。まさかのまさか、思い出深いこの曲をやってくれるとは思いませんでした。
クリス、泣きながらLovers To The Graveを絶唱!……というか、泣き過ぎだって。涙の連鎖が場内で起こり、もらい泣きするオジサンが続出……
恐らく多くのマンティスのファンはクリス・トロイの書く楽曲がとりわけ好きだと想像します。これは、いつも一生懸命で、お兄ちゃんのティノ思いの優しい気持ちをメロディから感じ取れるからではないでしょうか。恐ろしく丁寧な丸文字や環境問題を題材にした歌詞を持ち出すまでもなく、彼は本当に真面目なのだと思います。でも、2000年代に入ると、おとなしい曲が増えたような気がして、私は以前ほど曲にのめり込めなくなってしまったんですよ。もともとマンティスのスローな曲には当たり外れがあるように感じていたので、ちょっと違うんだよなあ…などと思ったりしていたのです。
でも、この日のクリスは第3期Deep Purpleのグレン・ヒューズばりに声を張って歌っていることがわかりました。それこそ、ジョン・カイペルス(VO)が霞んじゃうほどで、ちょっと掛かり過ぎじゃないの?と思ったくらい。なので、4曲目の「HighWay」から8曲目の「Dream On」まで、私の趣味からすると、かなり地味な選曲でも切実さが感じられ、素直にジーンときました。そして、ジョンには申し訳ないんですが、クリスばかり追いかけて、写真を撮っていたら早々に気付いてしまったんですよね。思い切り泣いてるじゃん…
どのタイミングが最初だったか忘れましたが、オーディエンスの視線を自分に向けるように、ティノが何度もおどけて見せたシーンを覚えている人は多いと思います。成功させなければならないというリーダーとしての責任感と同時に、これぞ、兄貴でしょ。「弟がやられていたら出て行くタイプ」のお兄ちゃんなんだろうなあ。そして、ジョンが引っ込み、80年代のように、クリスがリードヴォーカルを務めた「Lovers To The Grave」が炸裂します。
再結成される以前からのファンも、90年代以降、ファンになった人も、絶対に待ち望んでいた曲です。姿勢正しく、胸を張って歌うクリスのこの曲は、ここまでのセットリストの順番を完全に忘れさせるほどの破壊力でした。ただですね、こりゃ、反則も反則ですよ、ファストに展開していくところで、子供のように泣きじゃくるから、こっちはますますつられるじゃないですか。
こんなに素晴らしいアルバムを続けて2枚作ったのに、何故、さよならを言う?マンティスの曲作りのポテンシャルはいま再び盛り返してきているのに…
ところで、ファンは近2作をどのように評価しているのでしょう?私はファストナンバーが激減し、マンティスにはもうかつてのようなスリリングな曲は難しいのかなあ…と思っていたので「Cry For The Nations」では起死回生のタイトルトラックをはじめ、いくつかの曲でガッツポーズが出ました。そして、好きな曲の数だけで言うなら「Defiance」はさらに上。「これが叙情派の帝王だ!」と思った曲こそプレイされませんでしたが、アルバムだと少しコミカルに聴こえた「Standing Tall」はライブにフックをもたらす想像以上の佳曲だと気付かされました。楽曲作りにおいて、マンティスは再び盛り返してきたと思うんですよね。だから、お別れを言いにきたというのが、どうしても解せない。そのへんを思うと悲しみがさらに増します。
閑話休題 私の浪人時代
イントロだけで勝負を決めた伝説の「Letting Go」!もし「A Cry For The New Worldからの曲を多めにしろ」というアドバイスをしたのであれば、さすがは伊藤政則御大、今回のライブの勘所をわかっている!
話が前後しますが、ライブ前に挨拶した伊藤政則さんは入れ知恵をしたのでしょうか。ここからは推測になります。もし、今回「A Cry For The New Worldからの曲を多めにしろ」というアドバイスがあったとしたら素直に感謝です。このような推測に至った理由は「Predetor In Disguise」の大失敗を受け「Time Slipping AwayのデモバージョンやTurn The Table、Children Of The Earthあたりを思い出して曲を作れ」と助言したのは政則さんだと記憶しているからです。残念ながらライナーノーツを紛失してしまい、具体的な言葉を引用できませんが、このような経緯から生まれたのが「Rise Up Again」や「Letting Go」であることは間違いないと思います。そして、もし、あの時の軌道修正がなかったら、マンティスはそのまま間違った方向へ行ってしまったような気がしてなりません。このように考えると、本当にゾッとしますよね。つまり、セーソク御大は活動を辞めていたマンティスを再結成させた恩人というだけでなく、音楽的な道しるべといえるのかもしれません。
参考☟
こういう思いもあって「Captured City」「Time Slipping Away」と大好きな曲が続いたこと以上に、本編ラストの「Letting Go」には度肝を抜かれました。印象的なイントロのギターにバキバキ唸るベースは過去を凌駕して鋭く、躍動感があったように思います。マンティスがWishbone Ashなどの影響を全開に大作主義を強めていったのは、この曲や同じ「A Cry For The New World」に収録された「Fight To Be Free」あたりがきっかけではないでしょうか。私は本編を締めるのは「Turn The Table」と決めつけていたので、完全にブラインドから脳天をやられたような衝撃でした。こういう感動はあまり体験がないような気がします。
なお、サビの大合唱を想定しての選曲だと思いますが、帰ってから歌詞カードをめくって気付きました。偶然なのかもしれませんが、この曲の歌い出しはこのような内容になっています。
「I Close My Tired Eyes I Leave This World」
(疲れ切った疲れ切った目を閉じ、俺はこの世界を後にする)
続きが気になる方はCDを買って読んでみてください。トロイ兄弟は若くはないですし、我々ファンもほとんどが50代以上、中には70代なんていう声も聞かれました。ひょっとしたらバンドからのメッセージが込められていたのかもしれません。
「Flirting With Suicide」のちょっとコミカルな掛け合いから、究極の予定調和!そして、ダブルアンコールではまさかのカバー曲でフィニッシュ!
アンコールはティノとジョンのダブルヴォーカルの「Flirting With Suicide」から、究極の予定調和ともいえる「Children Of The Earth」。ここで、あえて名前を挙げさせてもらうと、「泣く」ということにかけては、もうひとりのギタリスト、アンディ・バーゲスは凄まじかった。彼の名前はいくつもの曲にクレジットが見られるし、もし、このままマンティスが本当にシーンから姿を消してしまうとしたら、あまりに惜しい人材です。原曲の印象的なフレーズをしっかり弾いていたし、この日の縁の下の力持ちは彼だったように思います。「Sanctuary」から参加しているらしいから、もう15年近くもメンバーだった訳ですね。なんか、注目していなくてごめんなさい。2000年代以降、マンティスのアルバムを買って流すだけのダメなファンだったことを告白します。
そして、帰らずにマンティス・コールで待っていたら、ダブルアンコールで飛び出したのは、レーナード・スキナードの「Simple Man」でした。あまりに有名な曲ですし、やっぱり悲しくなっちゃいました。帰り道、聞き耳を立てていたら、みなさん、いろいろ意見があるようですが、個人的には「出てきてくれただけで嬉しい」という立場です。そりゃ、聴きたい曲はたくさんありますが、You Tubeなどで見ていた限り、近年は曲のテンポを落としたり、スローな楽曲を中心にセットリストが組まれていたのも事実です。しかし、今回の日本公演は原曲の高い再現性を求め、相当な準備で臨んでくれたことが一目瞭然でした。いきなり3曲目に客の協力が不可欠な「A Cry For The New World」を持ってきたり、「Flirting With Suicide」でコミカルな歌の掛け合いを見せたり、引退宣言するバンドとは思えない冒険が多いステージだったと思います。
ティノ&クリスはLOVEBITESという日本のバンドまで連れてきてくれたロックの案内人なのであります。そういう意味でも深く感謝申し上げます!
さて、ダラダラ書いていても仕方ないので、このへんでいったん区切りとしますね。私がPraying Mantisと出会ったのは、伊藤政則さんのラジオ番組です。そして、ラジオ日本で放送していた時代から、熱心に聴いていた理由もPraying Mantisだったりします。途中からの目的は「Time Slipping Away」と「The Horn」のデモバージョン。これを録音するために2、3年、番組でかかるのを待った記憶があります。しかし「Demorabilia」という貴重な作品集ほか、欲しかった音源のほとんどがCD化されてしまい、ラジオを聴く理由はあまりなくなっちゃいました。結局、私はティノ&クリスのファンだったのだと思います。でも、今回の来日にあたり、昔のように番組の必要個所はチェックしたんですよ。もうこういうことはなくなっちゃうのかな。
加えて、私は2000年頃からロックとは完全に距離ができてしまって、Praying Mantisを聴き続けていなければ、こうしてライブに行くきっかけが得られなかったかもしれないのです。そして、哀愁のツインリードが連れてきてくれたのは、やはりLOVEBITESという泣きのツインリードでした。初めて好きになった日本のバンドで、未だに聴いていると、マンティスやNWOBHMの薫りを探している自分に気付いたりします。あえて歌い手に苦労させられてきたバンドに思い切り私の宝物を自慢させてください。LOVEBITESのヴォーカリストは私のメタル史において最強だと思っています。なので、ここまで連れてきてくれたティノとクリスには本当に感謝しているのですよ。
社交辞令なのかもしれないけど、ティノは「See You Soon!」と何度か言葉にしていたはずです。じゃあ、俺もお別れは言いません。本当にいいライブでした。本稿はこんなところです。さよならは半分だけにしておきます。See You Soon!
※LOVEBITESとの関連について☟
※コリン・ピール事件とゲイリー・バーデンほかについて☟
※Praying Mantis、来日後、スペインにわたって、Rock Imperium Festivalに出演!
※NWOBHMがらみのヤバいブツとPraying Mantisのイケナイものとセーソクさんの不思議な関係☟
※札幌で見付けたNWOBHM風味のマンティスの影響を感じさせるバンドについて☟
Setlist(2024.6.5)
- Praying Mantis
- Play VidePanic in the Streets
- Play VideoA Cry for the New World
- Play VideoHighway
- Play VideoDefiance
- Believable
- Play VideoBorderline
- Play VideoDream On
- Lovers to the Grave
- Rise Up Again
- Cry for the Nations
- Keep It Alive
- Standing Tall
- Captured City
- Time Slipping Away
- Letting Go
Encore 1:Flirting With Suicide/Children of the Earth
Pla
Play Vi
PlayEncore 2:Simple Man(Lynyrd Skynyrd cover)
閑話休題 私が本気である証拠
追記
最後ということでPraying Mantisの部分をPower Rock Todayでチェックしておきました。こうやって録音していた高校時代や浪人時代が懐かしいですね。やはり、セーソクさんもヴォーカルに恵まれなかったこと、歴代ナンバー1ヴォーカリストのコリン・ピールが「俳優になる」と言って、辞めてしまった件について触れていました。それくらいあの脱退はファンにとって「?」がいくつも付く衝撃というか、笑撃でした。セットリストについては、やはり助言したように感じられました。これは昔から聴いている者の感覚であって、なんとなくですが、根拠となりますと、あらかじめ、かなりやりとりをしていたという発言、そして、言外に「A Cry For The New World」というアルバムを強調していた点でしょうか。
あと、思い上がりなのかもしれませんが、リスナーをほぼ卒業している私のSNSに、目を通されているのかもしれません。大学時代、大阪のラジオ番組に酔って残した留守電メッセージが採用されて以来、かなり投稿を読まれていますので、覚えてくださっていると感じる時があります。実際、Praying Mantisのリクエストも採用されたことがありますし、LOVEBITESのみなさんに少なからず目をかけていただいている縁もあるのでしょう。このブログで綴ったPraying Mantisの思い出をいくつかそのまま話されていたので、少しだけ嬉しくなりました笑
これからもタイムフリー機能という便利なものもありますし、マンティスが本当に辞めてしまったとしても、たまには聴くと思います。でも、何をリクエストしたらいいんだろ?やはり私に求められているのは、Praying MantisかLOVEBITESなんでしょうか。なにか考えて、このブログに書いておきますわ。ということで、セーソクさん、この追記を読まれたようでしたら、そういうことでよろしく哀愁です。
※6月16日のオンエアリストをチェックしていたら、なんとScarletだそうです。まさかとは思うんですが、政則さん、もし本稿をご覧になっていただけたのなら、心より感謝申し上げます。コリン・ピールが在籍していたバンドの蘊蓄をどうぞ。
※マンティスの帰国後、2週続けてとなるといろいろ勘ぐってしまうのですが笑。
念のため、6月23日のオンエアリストをチェックしたら……辞めてから毎週かけても遅いっつーの。しかも、時代はかなり変わったようで、さすがのセーソクさんも暴言はもう許されないらしく、かなり酷評していた「Predetor In Disguise」を「いいアルバム」と評していらっしゃいました。これには苦笑い。お暇な方はクリスマスの帽子をかぶったカマキリの音声ファイルの内容と聞き比べてみてください。こちらでは「(デモのほうが)全然いい」とはっきりおっしゃってます。
ひょっとして、Praying Mantisが帰ってくる可能性があるなら、もちろん大歓迎です。確かカマキリはLOVEBITESとは別の日ですが、同じくスペインの巨大フェス「Rock Imperium Festival」に出ていたはずです。
※📻が目的の方も多いようですので笑☟
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