ぶっちぎりの1位以外は飛び道具だらけの個性勝負!そして『バトル・ロワイアル』が太田出版から出る!大手版元は腰抜けだな…笑
対象は1998年11月ー1999年10月。節目の年にまるでふさわしくなく、ミステリーのカテゴリーをまったく無視して、バラエティに富んだ顔ぶれ。これぞ、このミスですな。例えば、このミス内の特集「こうして作家になりました!」では、若い頃の岩井志麻子さんが出ています。すげえ美人です。16位の『ぼっけぇ、きょうてぇ』は第6回日本ホラー小説大賞の受賞作でした。見直してみたら、なんと「全選考委員の絶賛のもと受賞」とあります。このミスでもベタ褒めです。
そして、2000年、このミスに衝撃を走らせたのが『バトル・ロワイアル』。こちらは第5回日本ホラー小説大賞の最終候補作。内容はご説明するまでもないでしょう。内容が嫌われ、佳作ももらえなかったそうです。今は幻冬舎から出ているそうですが、当時は太田出版というところが笑えます。でも、そんなに過激ですかね?サカモチキンパツの「今日は、皆さんにちょっと、〇し合いをしてもらいまーす」の「皆さん」が問題なだけだと思ったんですが。そこが問題なのか。現実が酷過ぎるので、判断能力が麻痺してますわ。純粋に面白いと思って熱心に読みました。
あの浅田次郎センセ―はデビュー当時から才能を見抜いていた!奥田英朗がブレイクしたのはこの年なのであーる
個人的には奥田英朗さんの7位『最悪』です。小市民がドツボにはまって、徐々に追い詰められていき、最後にプッツン。今になって見れば氏のパターンのひとつです。それでも、中盤をパラパラめくるだけで面白い。資金繰りに悩む下請け町工場の社長、セクハラに悩む女性銀行員、パチンコとトルエン密売で生きている自堕落な青年。とにかくキャラが立っていて、それぞれを追い込んでいく状況が意地悪過ぎる…。最高っすね。実はこの才能に目を付けていたのが、ほかならぬ浅田次郎氏で、デビュー作『ウランバーナの森』を大絶賛していました。とにかく人物造形が素晴らしく、トルエンの香りが漂ってくるほどの情景描写に脱帽です。
※以下では浅田次郎氏が奥田英朗さんの才能をデビュー当初から見抜いていたことや、格差社会の闇について書き続ける偉才の圧倒的な筆力などについて触れています。
東野圭吾の冷酷なまでの心を排した文章。「ひとつも心を打たない」は正解?超絶技巧が凝らされたノワールの大傑作『白夜行』
あとは東野圭吾さんの冷酷を見た2位の『白夜行』。令和になってネタバレもクソもないですが、この本を説明することはオチをそのまま書くこと。それはダサいので止めておきます。第三者視点で主人公ふたりの内面描写を一切省き、行動のみを書く。これが徹底されています。「完璧だが、心をひとつも打たれない」というレビューを読んだことがありますが、ある意味、それは当たっていると思います。しかし、そう思わせるのが、東野さんの狙いだったのでは?なお、ドラマ化だけは意味がわからなかったです。はっきり言って、あれはすべてがひどかったと思います。
『柔らかな頬』の元刑事がうどんを食うシーンだけでも読んでほしい。本当にグロくてエグいのは桐野夏生かもしれない?
このほかでは、やっぱ9位の『ハサミ男』。これも叙述のトリックなので、映画化の意味がさっぱりわからず。もちろん、見ていません。あとは10位の『MISSING』は普通の小説だけど「たまには箸休めがほしい」という漬け物みたいな味わい。そして、やはり桐野夏生さんの5位『柔らかな頬』。癌で刑事を退職し、余命を失踪人捜しに捧げた内藤の「うどんの食い方」だけでも読んでほしいです。ひょっとしたら『バトル・ロワイアル』より、『白夜行』より、これが一番ゾクッとくるかもしれません。ぶっちぎりの1位にも触れろという話ですが、とにかく、この年は凄いということで。あとで色々書き足すかもしれません。
2000年 このミステリーがすごい!ベスト20
- 1位 永遠の仔 天童荒太
- 2位 白夜行 東野圭吾
- 3位 亡国のイージス 福井晴敏
- 4位 バトル・ロワイアル 高見広春
- 5位 柔らかな頬 桐野夏生
- 6位 ボーダーライン 真保裕一
- 7位 最悪 奥田英朗
- 8位 盤上の敵 北村薫
- 9位 ハサミ男 殊能将之
- 10位 MISSING 本多孝好
- 11位 法月綸太郎の新冒険 法月綸太郎
- 12位 二進法の犬 花村萬月
- 12位 この闇と光 服部まゆみ
- 14位 蘆屋家の崩壊 津原泰水
- 15位 青き炎 貴志祐介
- 16位 ぼっけぇ、きょうてぇ 岩井志麻子
- 17位 カムナビ 梅原克文
- 18位 プリズム 貫井徳郎
- 19位 恋愛中毒 山本文緒
- 20位 巷説百物語 京極夏彦
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