水川あさみで有名なNHKのあのドラマがこの作品だ!!ロックンロール作家・奥田英朗は「平成の家族シリーズ」第2弾『我が家の問題』を刊行!野村周平主演で映画化された『純平、考え直せ』もこの年だった!人間のエグみを煮詰めたような沼田まほかるの『ユリゴコロ』、月村了衛の大人気シリーズ『機龍警察 自爆条項』、高野和明のコロナ時代の予言書『ジェノサイド』が存在感を放つ2012年版『このミステリーがすごい!」

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このミステリーがすごい!(工事中)
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  1. 2012年版 このミステリーがすごい!ベスト20
  2. 『機龍警察』シリーズが、心優しき女テロリスト・ライザの『自爆条項」でついにランクインを果たす!
  3. 読んでいると心をナイフで滅多刺しにされたような感覚!沼田まほかるの破壊力を最初に見抜いたのは熱心な女性ファンだった?
  4. このミスには現代の予言書ともいうべき作品が多数。中でも高野和明の『ジェノサイド』はコロナ禍の世界を看破したような鋭さ!
  5. 樋口毅彦さんは不夜城へのリスペクトを綴った『さらば雑司ヶ谷』が一番面白かったです。私は『民宿雪国』でストップしたままです…
  6. 奥田英朗氏は「平成の家族シリーズ」第2弾を刊行!弱り切っていた心身を癒してもらったことを覚えています…
  7. 偉才は「大切な人が疲れてしまい、闇に陥り、おかしくなってしまった時、私たちが真っ先にできること」について既に具体的に書いていました!奥田小説の強い女性は本当に素敵です!
  8. 映画化された『純平、考え直せ』は絶対に小説で読んでこそ!無軌道に突っ走る主人公のチンピラの姿になぜか前向きさが込み上げてきます
  9. 寿司、焼肉、セックス、母との再会…オツトメ前の定番儀礼すべてが面白く、ちょっぴり切なく「俺の人生はかなりマシじゃないか」と思えてくる!

2012年版 このミステリーがすごい!ベスト20

対象は2010年10月ー2011年11月。心にまったくゆとりがなかったせいでしょうか。いろいろあったので、いつ本を読んでいたのかさえ、覚えていないというのが正直なところです。恐らく、すべて刊行されてから、だいぶ経った後なのでしょう。自分の弱さを思い知りました。

今回もこのミスを普通に振り返った後、奥田英朗さんの作品をご紹介したいと思います。
























































『機龍警察』シリーズが、心優しき女テロリスト・ライザの『自爆条項」でついにランクインを果たす!

さて、9位に月村了衛さんの『機龍警察 自爆条項』がついにランクインします。「アイルランド人女性の元テロリスト」ライザ・ラードナー警部が主役を張る作品で、このミスに初登場というのが嬉しいです。今も続く壮大なシリーズの中でも、ライザは特にお気に入りのキャラクターです。ご存知、本物の警察小説であり、冒険小説であり、ハードボイルドでもあります。

第1弾の『機龍警察』が話題にならなかった理由は知りませんが、月村さんの名前が広く知られるようになったのは、この作品からだったような気がします。私はガンダムもSFもさほど好きではありませんが、このシリーズだけは別腹。近未来型ロボット小説だと勘違いし、敬遠されている方がいらっしゃったら、ぜひオススメします。
























































読んでいると心をナイフで滅多刺しにされたような感覚!沼田まほかるの破壊力を最初に見抜いたのは熱心な女性ファンだった?

沼田まほかるさんも、5位『ユリゴコロ』でようやくランクインします。私は女性の知人の勧めで『九月が永遠に続けば』『彼女がその名を知らない鳥たち』『猫鳴り』は発表前に読んでいました。日本ホラーサスペンス大賞受賞のデビュー作『九月が永遠に続けば』は2005年刊行。とっくに女性ファンの間では、恨み、つらみ、ねたみ、男への暴言、ビョーキな人間の描写などが話題だったらしく、オジサン代表は趣味の尖り方におののいた記憶があります。

2012年版のこのミスでは、書評家の藤田香織さんが「女性が描く女が怖い!ミステリー」と題し、沼田さんを筆頭に挙げています。生々しくて、刺々しい台詞がきつい沼田作品は、人間の嫌な部分を煮詰めたような香ばしさ。『ユリゴコロ』からでもよいですが、私は導入として『彼女がその名を知らない鳥たち』を推薦します。これを楽しめれば、大概の作品は耐えられるという理由です。なお、文章は平易で読みやすい。そして、そこが逆に怖い理由でもある訳です。
























































このミスには現代の予言書ともいうべき作品が多数。中でも高野和明の『ジェノサイド』はコロナ禍の世界を看破したような鋭さ!

普通に考えるなら、この年は高野和明さんの1位『ジェノサイド』に尽きます。このミス上位の作品で時に驚かされるのが、奇しくも「現実の予言書」となってしまった設定です。本作で取り上げられているのは、なんと「全人類が絶滅の可能性にさらされる可能性のあるウイルス」。「野生時代」での連載開始が2010年4月とありますが、実際、年を追うごとに、こういった現象は増えていきます。

また、予言書となった本の内容に近い世界を目の当たりするまでの期間が、徐々に短くなっていくのも恐ろしい事実です。これは小説家がリアリティ追求のため、世の中の最先端について、いかに詳しく調べているかの証明でしょう。物語に必要な知識を得るため、膨大な資料にあたっていると、必然的に起こり得る事実に辿り着くのかもしれません。本書にはかなりの衝撃を受けましたし、ようやく読み返す気持ちのゆとりができました。いずれ何度目かの再読に挑むのだろうと思っています。
























































樋口毅彦さんは不夜城へのリスペクトを綴った『さらば雑司ヶ谷』が一番面白かったです。私は『民宿雪国』でストップしたままです…

このほかでは、樋口毅宏さんの11位『民宿雪国』。デビュー作『さらば雑司ヶ谷』では馳星周氏の『不夜城』へのリスペクトが綴られていたので、ファンである私は手に取りました。『さらば雑司ヶ谷』『雑司ヶ谷R.I.P』『民宿雪国』の3作は面白いと思います。あとは、2022年に急逝された津原泰水さんの『11eleven』が12位にランクインしたほか、今ではすっかり有名になった辻村深月さん、長沢樹さんも名を連ねています。
























































奥田英朗氏は「平成の家族シリーズ」第2弾を刊行!弱り切っていた心身を癒してもらったことを覚えています…

さて、みなさま、ご目当ての奥田英朗さんに話を移しましょう。この期間に刊行されたのは「平成の家族シリーズ」第2弾『我が家の問題』。ウィキペディアを調べましたら『純平、考え直せ』も出ていたようですが、私にとっては『我が家の問題』となります。といいますのも、震災を機に離婚しました笑。そういうこともあって、奥田さんの本を通じて救われたと実感した記憶が鮮明です。

この作品集もシリーズ第1弾の『家族日和』と同じく6作を収録。新婚男性の帰りたくない病を描いた『甘い生活?』、「ウチのは仕事ができないのかもしれない?」と疑念を抱いていたところ、夫がバッティングセンター通いを始めていた『ハズバンド』、子供目線から離婚の道を歩む夫婦を見た『絵里のエイプリルフール』、お盆の帰省と海外旅行の日程で悩む新婚夫婦を描いた『里帰り』、『家族日和』に収録された『妻と玄米食』の続編にあたる『妻とマラソン』…どの作品も疲れてしまった者にはちょうどいい軽さがあって、何も考えず、クスっと笑いながら読めてしまうところが素敵です。

新婚にも関わらず妻を鬱陶しく思う『甘い生活?』に共感できる男性は多いはず。やたらと世話好きで、アットホームな家庭を演出したがる女性に対して「何が面白いんだ?」という感情が芽生えたら、そういう問題は早めに潰しておいたほうが「お互いのためによいのでは?」と男目線で説かれています。『ハズバンド』は男は基本的に家に帰りたくない動物で、一人の時間がないと狂ってしまうという意味で私は共感。あとは『絵里のエイプリルフール』でしょう。「子供って想像以上に大人でたくましい」というありがちな設定ながら、奥田作品はもっと繊細で見る角度からして斬新です。奥田さんの等身大と思える『妻とマラソン』は例の観察眼と素直な気持ちで癇に障るものはバッサバッサ。この手の笑いが好きな人には鉄板なはずです。
























































偉才は「大切な人が疲れてしまい、闇に陥り、おかしくなってしまった時、私たちが真っ先にできること」について既に具体的に書いていました!奥田小説の強い女性は本当に素敵です!

ところで、このほのぼの短編集にあって、とりわけインパクトがあったのが、夫がUFOを見たと言い出した挙げ句、子供の前でも「それは宇宙人だな」などと言い出す『夫とUFO』です。大切な人が本当にあっちにイってしまった時はもっとたいへんなんでしょうが、コロナ禍を経て、よく耳にする話です。読み直してみて思いましたが、もし、少しでもおかしいと気付いたら、無駄な推理など不要。善は急げで、即行動なのだと思います。奥田さんは強くて行動力のある女性を描かせたらピカイチであり、説得力が半端ではない。この珠玉の一篇だけで買う価値があるように思います。
























































映画化された『純平、考え直せ』は絶対に小説で読んでこそ!無軌道に突っ走る主人公のチンピラの姿になぜか前向きさが込み上げてきます

『純平、考え直せ』についても軽く触れておきます。実は私、この作品が映像化されていたことを知りませんでしたし、まだ観てもいません。奥田作品は本で読んでこそだと思うからです。実際、奥田さんは「プロットを立てずに書く」と同時に「言葉やセンテンスの面白さに力を注いでいる(引用元を忘却。見つかり次第、加筆しておきます)」というようなことを仰られていたはず。なので、そのへんの妙が味わえない映像作品はまったくの別物なのかなあと思ったりします。

さて、本書は奥田さんの即興が冴えまくっているのではないでしょうか。ここからは私の想像です。「坂本純平、21歳。六明会傘下の早田組から盃をもらって2年の使いっ走り。キャバクラのお姉さん、ゲイのショーダンサー、サンドウィッチマン、刑事まで黙っているだけで寄ってくる歌舞伎町の人気者。そして、43ページ目で、いきなり『3日後、敵対する組のタマをひとつ取ってきてくれ』」恐らく奥田さんはこのへんまでしか決めずに書きだしたように思えてなりません。だからこそ、ジャズやロックのインプロビゼーションのようにスリリングで、知的パロディの連発や流れるような展開に唸らされる訳です。
























































寿司、焼肉、セックス、母との再会…オツトメ前の定番儀礼すべてが面白く、ちょっぴり切なく「俺の人生はかなりマシじゃないか」と思えてくる!

さて、純平に待っているのはオツトメであり、猶予は3日。そのため、クラブで出会った千葉の女との行きずりのセックスあり、回転寿司で絡んで来た世捨て人のような元大学教授との交流あり、2年ぶりに会う母との再会などが用意されています。限られた時間で人間はどうするのか、「タイムリミット作品アルアル」も奥田英朗にかかれば、その枠組みを忘れているから不思議なものです。

ひとつだけ大きなネタばらしをしてしまうなら、ネット上の掲示板に立った純平のスレッドでしょう。これが絶妙のスパイスとなっています。行き当たりばったりに突っ走っても、伏線は回収され、整合性の取れた着地点も見事?読んでいるだけで不思議と前向きになれる??一冊です。まだの方は小説でぜひ!

被災された方の悲しみやご苦労は計り知れませんし、この時期、読書どころではなく、落ち込んでいた方は多かったと思います。あくまで私の場合ですが、後になっていくつかの作品を読んでみて、貴重な読書体験を勇気のしるしとして、作家さんと編者者さんの粋な心遣いに気付かされました。非常に難しい状況の中、作品に携わったすべての方々に感謝申し上げます。あまり量は読んでいませんでしたが、救われた作品があったのはまぎれもない事実です。改めまして、ありがとうございました。

※これで奥田英朗という人の魅力が一発でわかる?

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2006年版『このミステリーがすごい!』ベスト20! 対象は2004年11月ー2005年10月。この年はとにかく傑作揃い...































































 

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